シンセサイザー[オシレーター]

シンセサイザーはエレクトロニックミュージックにとっての血液です。EDMはかれこれ20年以上の年月を経て発展してきましたが、アナログ減算式のシンセは様々なプラグインがある現在でも使われています。シンセサイザーには様々なバリエーションがありますが、幾つかの構成部分は共通するものも多いです。現在主流なものは減算式に加えて周波数変調(Frequency Modulation:FM)、加算方式(Aditive Synthesis)、グラニュラーシンセシス、ウェーブテーブルシンセシスなどがあります。

全てのシンセは音や波形を組み合わせ、豊かなハーモニクスを含んだ音色を作り出すのが基本です。その後フィルターなどでさらに音を作り込んでいき、最終的にモジュレーションを適用して音に動きをつけていきます。シンセによって操作は異なりますが、まずはアナログ減算式のシンセを理解すれば他のシンセを学ぶのに応用が利きます。

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fig.1 EDMプロデューサーに人気のある減産式シンセSylenth1

 

減産式シンセは主に以下のパーツからなります。
synth_basics

OSC(オシレーター)

OSC(オシレーター)はどんなシンセに限らず備われているいわばシンセのハートの部分です。オシレーターは基本となる音色を生成します。

もともとハードウェアアナログシンセではキーボード各音に備えられたコントロールボルテージ(Control Voltage:CV)がオシレーターの電圧を決定していました。Bog Moogによって1ボルト/オクターブという、1V電圧が上がるたびに音程は1オクターブ上がる仕組みが一般化されました。本来コントロールボルテージは正確な電圧を保たなければいけませんが、アナログ故なかなかピッチを精密に保つことは難しく、定期的にメンテナンスする必要がありました。ただこの微妙な音程の違いが、アナログシンセの魅力の一つともいえるでしょう。

現代のシンセはコントロールボルテージを用いる代わりに、各音程にはナンバーが割り振られ、シンセのCPUがどの音程かを判定し正確なピッチをOSCに伝えます。

初期のシンセサイザーはSquare Wave(矩形波), Sawtooth Wave(のこぎり波), Triangle Wave(三角波)の三つの波形しか用意されていませんでした。その後、Sine Wave(サイン波)やNoise(ノイズ)、Pulse Wave(パルス波)などのウェーブフォームが導入されてきました。

Waveform(波形)
サイン波(Sine Wave)

サイン波(Sine Wave)は三角関数の1つ、サイン関数によって定義される波形です。サイン波は倍音を一切含まず基音だけから成り立っています。このことから、ハーモニクスを削っていく初期のアナログ減産式シンセには向いておらず搭載されませんでした。サイン波に近い音としては口笛や音叉があげられ純音とも呼ばれます。サイン波は理論上発生させられますが、実際にはアナログ環境では雑音、デジタル環境においても誤差が生じたり、本当にピュアなサイン波を鳴らすことは難しいといわれています。サイン波は笛のような音色やサブベースを作るのに適しています。他のウェーブフォームと組み合わせたりして音の芯を強くしたり、音色を力強くしたりもします。

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fig.2 サイン波の波形(上)と周波数特性(下)

ノコギリ波(Sawtooth Wave)

ノコギリ波(Saw wave)はおそらくもっともよく使われている波形でしょう。きらびやかなリードやSupersawと言われるサウンドはダンスミュージックを代表し、他を凌駕するパワーがあります。偶数、奇数倍音どちらも均等に含み、その豊かな音色はフィルターで加工したり削ったりしてスウィープサウンドを作ったりと様々な用途があります。

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fig.3 ノコギリ波の波形(上)と周波数特性(下)

 

三角波(Triangle Wave)

三角波(Triangle Wave)はのこぎり波よりも丸くなったサウンドです。奇数倍音しか含んでおらず木管系の響きに似ているところがあります。周波数が高くなるほど倍音の振幅が急速に小さくなっていきます。響きは少し繊細で若干こもった印象がありますがサウンド自体は明るく、パッドとして使われたり他のオシレータと組み合わせてキラキラした音色を付加させたりもできます。

 

osc_triangle

fig. 4 三角波の波形(上)と周波数特性(下)

 

矩形波(Square Wave)

矩形波(Square Wave)は三角波と同様奇数次の倍音しか持ちません。振幅は高か低の二通りしかないため、電子回路においてはもっともシンプルな波形といえるでしょう。音色は豊かですが奇数倍音しか含まないためうつろに聞こえます。クラリネットのような木管楽器を再現したり、深いベースサウンドやリードサウンドを作るのにも向いています。三角波よりも倍音のエネルギーが多いため、音色は力強くなります。

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fig. 5 矩形波の波形(上)と周波数特性(下)

 

パルス波(Pulse Wave)

パルス波(Pulse Wave)は矩形波(Square Wave)と混同されやすいですが、シンセの世界では別の音として扱われます。矩形波とは違いデューティー比を変えることでパルス幅(Pulse Width)を変えることができます。このため倍音の成分も変わり、周波数特性も様々です。デューティー比を1:1にすれば矩形波になりますので、大体のシンセサイザーはパルス波のみを備えています。音色はリード系楽器に近く矩形波的な管の音色です。周期的なモジュレーターでパルス幅を変化させることで不規則な音色変化をつけたりすることがよく行われます。

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fig. 6 パルス波の波形(周波数特性はパルス幅によって異なる)

 

ノイズ(Noise)

ノイズはランダムな周波数の波形を含んでおり、音の高さを定義することが不可能です。周波数ごとのエネルギーの分布の違いによってホワイトノイズ、ピンクノイズ、ブラウンノイズなどといった種類に分類されます。ホワイトノイズはすべての周波数帯域に同じ量のエネルギーが分布しています。ピンクノイズとブラウンノイズは周波数帯域ごとにエネルギーの量が変わり、どちらもパワーが周波数に反比例し、高周波数ほどエネルギーが少なくなります。ブラウンノイズはピンクノイズに比べ低い周波数ほどパワーが強くなります。ピンクノイズはホワイトノイズより重くヒス音が強くなります。ブラウンノイズは-6db/octで減衰し、ホワイトノイズやピンクノイズに比べて柔らかい音です。ノイズはパーカッシブなサウンドを作るのに有効で初期のドラムマシンではスネアやクラップサウンドを作るのに使われていました。最近はドラムだけでなく、ベースやリードにも重ねて、高周波のエネルギーを満たすために使われるようにもなりました。

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fig. 7 ノイズの波形とホワイトノイズの周波数特性

 

コンピュータプロセッシングの進歩によって、三角-ノコギリ(Tri-Saw)や三角-パルス(Tri-Pulse)など新しい波形もどんどんシンセに取り込まれてきています。波形の種類はこれからも無限大に増えていくでしょう。