Active Listening – アクティブリスニングの重要性

Contents

盗作?インスピレーション?

曲を作る際私たちは様々な外的要因に影響を受けています。音楽は身の回りに溢れており、潜在的に僕たちはそれらを記憶しています。メロディーを作る際、頭に浮かびオリジナルだと思って書いたものが実は過去に聞いた他の曲の一部だったりといったことも少なくありません。曲を作る際、ユニークさを求めることは当然のことですが、自分の中で新しいことでもすでに他のプロデューサーにとっては過去のものということも多いです。アマチュアミュージシャンで純粋に自分の作りたい曲を作って楽しむ分には特にそういったことを気にする必要はありませんが、プロフェッショナルミュージシャンにとって自分の作品の要素が他の作品の一部と完全に同じだった場合は死活問題です。プロフェッショナルを目指す場合、自分の曲の需要がある層を意識し、そのエリアで似たようなアーティストの曲を分析することはとても重要です。完全にコピーしては盗作ですが、全く無視して作った場合は目指していたものと全く違う路線に逸れていってしまいます。どの程度他の曲からアイディアを拝借しても良いかというのは人にもより正しい答えはありませんが、根本的な要素は曲を作る上での土台として参考にすることができます。ともあれ完全に他の曲からのインスピレーションを無視することはできないということです。

アクティブリスニングとは?

自分の好きな曲だけでなく、たくさんの曲を聴くことはプロデューサーにとって大切なことですが、曲を聴く際に聞き流すのではなく、音楽を聴くということにフォーカスすること(Active Listening – アクティブリスニング)が重要となります。自分の目指すジャンルが明らかな場合は、そのジャンルの曲を分析して自分の曲に生かすことは当然のことです。これはコード進行やメロディーを曲を聴いて書き写すといったことではなく、もっと大きな土台の部分を真似るということです。その土台はSound -サウンド(楽器構成や音素材)、Harmony -ハーモニー(理論)、Melody -メロディー、Rhythm -リズム、Form -フォーム(形式)などに分けられます。

具体的な分析方法

[embedyt] http://www.youtube.com/watch?v=e5hAIZIuT-U[/embedyt]

例えばこの曲の場合、僕は次のように要素を分析しました。

138 bpm

Sound – サウンド

  Synth Bass (Pluck) – シンセベース(弦)

  Vox (Female, Soft, little delay at the tail) – ボーカル(女性、柔らかい、語尾にディレイ少々)

  Metallic Noise (Reversed cymbal?) – メタル系ノイズ(リバースシンバル?)

  Neuro Bass (Resynthesis) – ニューロベース(リシンセス)

  Distorted Synth – 歪んだシンセ音

  Pad – パッド

  Background Vocals – バックグラウンドボーカル

  Bright Pad (Filter Cutoff close→open) – 明るいパッド(フィルターカットオフ 閉→開)

  Synth (Triangle, Saw) – シンセ(三角系、ノコギリ系)

  Drums(Dubstep) – ドラムス(ダブステップ)

  Lots of stutter sounds – 多くのスタッターサウンド

Harmony – ハーモニー(和声)

  F# minor – F#マイナースケール

  start with F# ostinato – F#オスティナートから始まる

  Chord stay in F# min until the first Drop – 最初のドロップパートまでコードはF#min のみ

  Chord progress more after the first Drop – 最初のドロップの後、コード進行が展開する

  Second Drop starts with DMaj (VI Maj) – 二つ目のドロップセクションはDMaj (VI Maj)から始まる

Melody – メロディー

  Basically using only 5 notes (F#, G#, A, B, C#) until the second Drop – 基本的に二つ目のドロップセクションまではF#, G#, A, B, C# の五つの音符しか使っていない。

  Occasionally (only in Break after the first Drop) uses D&E; melody goes down then. – 時々DとEも使われる(最初のドロップ後のブレークのみ) その時メロディーは下降する

  In the 2nd & Final Drop, melody moves a lot and uses more notes – 二個目と最後のドロップセクションではより多くの音符を使い、メロディーの動きも活発になる

Rhythm – リズム

  Dubstep Half-time – ダブステップ、ハーフタイム

Form – フォーム(形式)

  Form is mainly 16 bars, sometimes 8 and 4 bars. – フォームは主に16小節、時々8小節や4小節 (ソングの形式についてはこちらを参照)

  (Intro, verse 16, verse 16, chorus 16, breakdown 8, verse 16, verse 16, riser 8, chorus 16, breakdown 4, verse 16, riser 8, chorus 16, Outro)

  Bass start, then each element enters by one – ベースから始まり後から他の要素が編入する

 最後に              

一つの曲をざっと分析するだけでもこれだけの情報が得られます。これらは曲の枠組みとなるもので、これらをベースに自分の曲を作っていくことも可能になります。これらの情報はただ単に大まかな骨組みなので、元の曲とは異なる新しい曲を作ることができます。これはクラシックで言えば多くの作曲家達がソナタフォームをベースに曲を作るようなものです。

参考

The following two tabs change content below.

Tomokazu Hiroki

バークリー音楽大学院(ミュージックプロダクション・テクノロジー・イノベーション専攻)でM.M.(音楽修士),バークリー音楽大学Post Mater’s Degree Fellowship(フェローシップ)を修了。Wwise認定インストラクター。Artful Designというコンセプトを軸に,XR音楽インターフェイスOPSYNなどを研究(Epic Games社よりEpic MegaGrantsを受賞)。音楽とテクノロジーを中心としたトピックを扱っています。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です