Scoring Sessionの準備 -CubaseからProtoolsへ-

フィルムスコアリングでは曲を作った後にオーケストラの生演奏を録音することがあります。通常ハリウッドではスコアリングステージという映画音楽専用のスタジオでオーケストラを録音します。スコアリングステージは現在日本にはありませんが、ハリウッドでは20世紀フォックス、パラマウントやワーナーブラザーズなど映画製作会社が所有しています。スコアリングステージでは通常Pro toolsでのセッションが行われるため、作曲家は自分のDAWからProtoolsにオーディオトラックやテンポ、拍子などのデータを移す必要があります。ここではCubaseからPro toolsへセッションを移動する方法を説明します。

scoring

Contents

はじめに確認すること

1_before_start

Cubaseのプロジェクトが48kHz, 24bitなのか確認

初めのフレーム(FFOA)のタイムコードが正しく同期されているか

クリックトラックをつくる

Cubase

File>Export>Audio Mixdownを選択

2_audio_mixdown

3_export_settings1. Channel Batch Export(マルチチャンネルの書き出し)にチェックを入れ、出力する楽器を選択します。(Channel Batch Exportでは各オーディオチャンネルのシグナルのみ書き出すため、FXバスやマスターバスを介さないドライなオーディオを書き出します。)

2. 書き出し用のボリュームを選択。Stripes to Pro Toolsなど分かりやすいフォルダを新規に作成します。このフォルダはテンポラリーでPro Toolsに読み込んだ後に削除するため、場所はどこでもかまいません。

3. Insert Broadcast Wave Chunk(Broadcast Wave Chunkを挿入をチェック。これにより、タイムコード情報がWavファイルに書き込まれ、Protoolsに読み込んだ際に正確な位置に自動的にオーディオを貼ることができます。その横のEdit(編集)ボタンを押し、Use This Timecodeにチェックが入っていないか確認してください。チェックが入っていたら外します。Insert IXML Chunkは特に気にしなくてかまいません。

5_insert_broadcast_edit

4. サンプルレートおよびビット数を確認します。Real-Time Export(実時間で書き出す)はどちらでもかまいません。

5. L/R Channels(L/Rチャンネル)にチェックを入れます。これにチェックを入れないと、オーディオをProtoolsに読み込んだ際、LとRそれぞれ別々のトラックが用意されてしまいます。

6. 確認が完了しましたら、Export(書き出し)を押して、実時間で書き出す人はコーヒーでも飲んでお待ちください。

Pro Toolsに取り込む前にファイル名にCueナンバー(1m01など)、楽器の属性、楽器名などを記し、エンジニアに分かりやすいようにしておきます。TBRは”To Be Recorded”の略で、後ほど録音して入れ替える楽器を示しています。

6_change_name

次にテンポ情報をMIDIで書き出します。File(ファイル)>Export(書き出し)>MIDI File(MIDIファイル)を選択します。

7_tempo_exportファイルパスは先程のテンポラリーフォルダーでかまいません。ファイル名にプロジェクトのスタートSMPTE(映像が入る場所ではなく実際のプロジェクトの開始時点)、および小節ナンバーであるマイナス1(このプロジェクトではプロジェクト設定でオフセットを2とし、-1の小節から始まっています。)をタイプしています。

9_project_smpte_bar8_tempo_file_name

Export Options(書き出しオプション)にてExport Markers(マーカー情報を含める)とExport as Type0(ファイルタイプ0で書き出す)にチェックを入れてOKを押します。

10_tempo_export_settings

Pro Tools

Cubase側での操作は終わったので、Pro Toolsを立ち上げます。 BFW, 24bit/48kHzであることを確認します。interleaved(インターリーブ)にチェックを入っていることを確かめ、新しいセッションを立ち上げます。

11_open_protools

Setup>Session(設定>セッション)(cmd+2)でSession Setup(セッション設定)を開きます。

12_open_session_setting

正しいTimecode Rate(タイムコードレート)とFrame Rate(フレームレート)を選択します。Session Start(セッションスタート)は初めの時(hour)のみを直します。下のムービーの場合、映像の始まりが02:50:25:05なのでSession Start(セッションスタート)は、02:00:00:00としておきます。もしあなたの動画が01:05:23:21などの場合はセッションスタートは01:00:00:00としておきます。

13_session_setup

14_movie_ex

続いて動画をインポートします。File>Import>Video(ファイル>インポート>ビデオ)を選択します。

*動画はFinderからProtoolsのセッションに直接ドロップしないでください。

動画を選択した後、次のウィンドウでLocationをSpot(スポット)とし、Import Audio from Fileにチェックを入れOKを押します。

15_video_import_option

Time ScaleをTimecode, Startはムービーの最初のフレームの時間を入力しOKを押します。

16_spot_dialog

Time Codeが正しく同期されているか確認して下さい。

17_check_tc

つづいてテンポマップをインポートします。File>Import>MIDI(ファイル>インポート>MIDI)からMIDIインポートオプションを開きます。

18_import_midi

Location(配置場所)をspotにし、Import tempo map from MIDI File(MIDIファイルからテンポマップをインポート)にチェックを入れます。

19_midi_import_options

CubaseからテンポをMIDIでエクスポートする際にファイル名に記載したSMPTEタイムを入力します。

20_spot_dialog

テンポマップ以外のMIDIは不要なので削除します。

21_delete_midi

Pro Toolsは読み込んだMIDIの先頭が1小節めになるのでこれを小節-1に直す必要があります。Event(イベント)>Renumber Bars(小節番号を変更)コマンドで小節1を小節-1に変更します。

22_renumber_bars

最後にオーディオをインポートします。File(ファイル)>Import(インポート)>Audio(オーディオ)からCubaseでエクスポートしたオーディオを読み込みます。この際Add(追加)ではなくCopy(変換)を選択します。*オーディオは絶対にFinderからPro Toolsへ直接ドロップしないでください。

23_import_audio

下の画面ではLocationをSpot(スポット)とします。

24_audio_import_options

次の画面ではテンポマップをインポートした時と同じタイムコードを入力します。CubaseでタイムコードをWavファイルに埋め込んであるので自動的に表示されると思います。

25_audio_spot_dialog

オーディオはアルファベット順にインポートされます。適切な順番になるようオーガナイズしてください。クリックトラックは一番頭、レファレンストラックは通常一番下に持っていきます。

26_final_adjustments

セッションに持っていく前に小節、ビート、TCやテンポ、メーターは表示させておきましょう。またPro Toolsのフォルダにオーディオがきちんとコピーされているか確認してください。Cubaseからエクスポートしたオーディオファイルが入っているフォルダは削除してかまいません。

以上がCubaseからPro Toolsへ、セッションを移動する際の流れです。

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Tomokazu Hiroki

バークリー音楽大学院(ミュージックプロダクション・テクノロジー・イノベーション専攻)でM.M.(音楽修士),バークリー音楽大学Post Mater’s Degree Fellowship(フェローシップ)を修了。Wwise認定インストラクター。Artful Designというコンセプトを軸に,XR音楽インターフェイスOPSYNなどを研究(Epic Games社よりEpic MegaGrantsを受賞)。音楽とテクノロジーを中心としたトピックを扱っています。

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