インターネットの発達によって音楽業界は変わり、音楽業界という言葉すら存続するかは時間の問題ですが、アーティストの立場からしてもこれから音楽業界はますます不要なものになっていくでしょう。90年代はレコードやCDを製作するために技術的にレコード会社の設備を使わざるを得ませんでしたが、今は個人でパソコン1台あればすべて完結してしまいます。
fig. 1 旧式の音楽業界
fig 2 これからの音楽の在り方
音楽業界の先駆者であるBobby Owsinskiによると、これからのアーティストの役目は、自分の部族(ファン)を育てることだそうです。部族にはリーダーが必要ですがこの際必ずしもリーダーがアーティストである必要はありません。リーダーは連絡をとったり、会話を導いたり、参加しやすい場を提供することです。部族にはコミュニケーションの場が必要です。音楽業界という文明が崩壊して、原点に回帰するといったところでしょうか。興味がある方はOwsinskiのmusic4.1という本をチェックしてみてください。部族の育て方などいろいろ解説してあります。
“1000人の本当のファン”というセオリーがあります。Wiredマガジンの”senior maverick”で、Kevin Kellyは1000人の本当のファンがいれば華々しくはないけれども有意義なキャリアを維持することができると述べています。本当のファン(スーパーファン、uberfan・超ファン、部族などとも)とはあなたのすることすべてに情熱的な人たちです。
これからプロデューサーを目指していく人にとって、レーベルは特別な理由がない限り所属する必要がないでしょう。レーベルがする仕事はアーティストを宣伝することです。また大手放送業界とコネクションがあるため、そういうメジャーなメディアで活躍したいという人でしたらレーベルの価値は未だあるでしょう。音楽で生活していくということが目標でしたら、特にレーベルにこだわる必要はありません。放送業界はNetflixなどのストリーミングにとって代わられ、Youtubeは現代のラジオ局です。もしそういう場所で視聴回数を伸ばせばレーベルの方から声がかかるでしょう。レーベルはすでにファンが多くいるアーティストとは喜んで契約します。
ただ、レーベルに所属しない方が様々なメリットがあります。音楽一本で生きていくというアーティストは顧客の求める音楽を作らなければいけません。確かに芸術家はその道一本で生きていくのが美徳という価値観もあったでしょう。しかし、現実社会100%同じ仕事だけをする人はいません。電話の応答もあれば、顧客のサポート、部下がミスをした場合のフォローなどマルチタスクです。逆に音楽一本だけでなく他にも支えとなる収入があれば、もっと実験的に自由に音楽に取り組めます。手軽に制作環境が手に入る分、曲をプロデュースする人間もどんどん増えていくため、副次的な産業も生まれています。サンプルパック、プリセットパック(NI Kontakt, NI Massive, Serumなど)、ミキシングやマスタリングサービス、レッスン、チュートリアル、ミュージックビデオなどなど、これからのプロデューサーに出来る仕事は様々です。またロイヤルティーフリーのBGMを販売するという方法もあります。Audiojungleや日本ではAudiostock, Dova-Syndromeなどがあります。僕も何点か最近販売を開始しました。
Dova-Syndromeはフリーの音源サイトですが、Google Adsenseなどの広告が貼れます。そこを通じて仕事の依頼もくるかもしれません。
TuneCoreではiTunes, Spotify, Amazonに自分で曲を流通することができます。またBassやnoteなどの既成のネットショップ、或いは自分専用のネットショップをMusic Makerなどのテーマを用いて作ることもできます。CDなどのフィジカルなものにこだわりたい人はat greenでCDプレスが行えます。作ったCDはULTRA-VYBEでタワレコやHMVに流通できます。
これはほんの一例ですがこれからもどんどんいろいろなサービスが出来ていくことでしょう。
Tomokazu Hiroki
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